Lepido and Scales
怪奇 クビワチョウ
2010年 03月 15日 (月) | 編集

私の渋い蝶好きはだんだん極まって来ている気がしますが、気のせいです。多分、きっと。


Calinaga davidis ?
Calinaga davidis (たぶん) (♂, 中国雲南省 徳欽県 尼西郷2900m/ 2900m, De qen, Yunnan, China. May. 2008)

 さて本日のこのクビワチョウ Calinaga 、タテハチョウ科の中でも、怪異にして珍奇、まさに妖怪的なてふてふなのです。何がって、まず間違いなく毒チョウだといわれるシロチョウ科のエゾシロチョウ属 Aporiaや、カザリシロチョウ属 Delias 、タテハチョウ科,マダラチョウ亜科のアサギマダラ属 Parantica なんかに擬態していてそれ自体は別に珍しくないんですが、とにかく異様な体構造をしております。
翅形は変だし、胸部は貧弱なのに脚はごついし、アンテナ短いし、特に変わっているのはアゲハやシロチョウ宜しく腹部第8背板にスーパーウンクス(という突起)をもっていて、交尾器のバルバ(把握器)の構造も一部のアゲハによく似ている。それに何より見た目が不気味。
 ちなみに「クビワチョウ」の名前の由来は頸(厳密には前胸部)のあたりに赤や黄色の毛がぐるりと生えているからで、和名の響きも妖しいですね。


Calinaga sudassana
Calinaga sudassana (♀, タイ チェンライ ウィアンパパオ/ Wiang Pa Pao, Chiang Rai, N.Thailand. Apr. 2007)

 ところで、この仲間はクビワチョウ亜科Calinaginaeという一群にまとめられているのですが、タテハチョウ科の中でも分類学的位置がいまいち定まらない困ったグループで、近年は広義ジャノメ群の端っこに位置づけられることが多いようです。
中国南部からヒマラヤ、インドシナ半島中部くらいに分布していて、種数が多いのは中国南部周辺。


Calinaga latsuo
Calinaga lhatso (♂, 中国雲南省 徳欽県 尼西郷2900m/ 2900m, De qen, Yunnan, China. May. 2008)

 ざっくりと調べたところ、現在は10種程度に整理されているらしいのだが、はっきり言って半数以上が同定困難。記載文の情報が少ない上に、形質も適当で、本によっては色々と混乱している。そもそも地域によって収斂的な変異が起こる擬態斑紋をキーとしているので、おそらくその分類は不十分なのは間違いなく、おまけに、アッサム、チベット~中国南部は標本が多くは入ってこない上に珍品が多い、と正に3重苦。
リンク先のアダシノさんとこで書かれていた、オオカミヘビみたいな状況のグループなのですよ。だが、そこが面白い!

 写真ですが、1枚目はダヴィディス自体はそんなに珍しい種じゃないんですが、これが本当にダヴィディスなのか良く分かりませぬ。恐らく擬態のモデルはエゾシロチョウ Aporia だと思われます。2枚目のスダッサナはインドシナの種でタイではまぁまぁレアです。おそらくアサギマダラなんかに擬態してるんでしょうね。でかくて不気味です。最後のラーツォは激珍です。多分カザリシロチョウ(デリアス)擬態。これの四川省の亜種はベラドンナカザリシロ宜しく真っ黒になるので欲しい。

 他には今のところ、ブッダ buddha とアボリカ aborica を持っているので、そちらもその内紹介しましょう。
しかし、こんなチョウを偏愛している日本人っていったい何人いるのだろうか...10人いれば良い方かも。
この渋いてふてふにもっと光を...!



Comment
この記事へのコメント
クビワチョウいいですね。
アサギマダラが好きで、マーキング調査に関わっています。インセクトフェアではアサギ関連種(近縁種や擬態種)を買ったりもします。
先日の京都のフェアではラオス産クビワチョウの展翅標本に一目惚れして買いました。buddhaの表示でしたが、sudassanaかもしれないと思っています。こいつの飛んでいる姿を見てみたいものです。
Author様がキープされているというあとの二種の画像をぜひ拝見したいと思いました。よろしくお願いします。
2010/ 08/ 30 (月) 23: 21: 05 | URL | 蟲師 # sDWkoQyo[ 編集 ]
蟲師さん
コメント有難うございます。
中々こちらの分野でコメント頂く事は少ないので大変嬉しいです!

アサギネットにお関わりとのことですが、あれは面白そうですね。
私はフェアではフタオばかりですが、擬態関係にある分類群にも興味があります。以前キャメロンハイランドで、カバシタアゲハChilasa agestorとナマアサギゴマダラHestinalis namaとタイワンアサギマダラP. melaneusが同じ場所で同じ飛び方で飛んでいたのを見た時は、その真似ぶりに驚愕しました。
アサギ擬態種の最高峰(蝶では)は個人的には雲南西部やチベット特産のイミタンススジグロミスジAldania imitansなのですが、中々手に入りませんね…

クビワチョウ、ラオスですと恐らくsudassanaくらいしか記録が無い筈なので間違いないと思います。私もこのグループが大好きで、細々と集めていますが、まだ現地で生きているのを見たことが無いので、是非飛ぶ姿を見てみたいものです。

写真、近いうちに掲載致します。
2010/ 09/ 01 (水) 16: 53: 13 | URL | acraeoides # aCXfCcIc[ 編集 ]
アサギ擬態種
東南アジアに分布するアサギ擬態種はどれほどいるのでしょうね。
今回既出のもの以外にも、
Graphium xenocles(ゼノクルスタイマイ)
Erymnias ceryx(マネシジャノメ)
Valerionia valeria(オオアサギシロチョウ)
があります。Valerioniaは名前(和名)だけであまり似ていないようにも思います。また、昼蛾のなかにも
Cyclosia notabilis(マダラガ科)
のように一目見てそれと判るものもあり、こんなのをフェアで見つけると嬉しくなってしまいます。

ブログ本文中でもAuthor様が言われている
Aldania imitans(イミタンススジグロミスジ)
なのですが、いくら検索をかけてもネット上に画像が見つかりません。標本写真でいいから一度見てみたいものです。
2010/ 09/ 01 (水) 22: 41: 02 | URL | 蟲師 # sDWkoQyo[ 編集 ]
蟲師さん
Graphiumですとphidiasなんかもそれっぽいですよね。Elymnias ceryxoidesもそっくりです。
アサギマダラに限らず、Parantica全体やIdeopsisに拡げれば結構擬態種はいるように思いますが、アサギマダラP. sitaやタイワンアサギP. melaneusに限定するとそんなに多くなさそうな気がします。しかし特にこれらに擬態する者は、完成度が高いものが多いのが面白いですね。

アサギシロチョウPaleroniaはどちらかと言えば、Ideopsisですよね。
昼蛾もこう言うのが結構いるので面白いですね。デリアス擬態のマダラガを採った時には感激しました。
2010/ 09/ 02 (木) 20: 51: 11 | URL | acraeoides # aCXfCcIc[ 編集 ]
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