Lepido and Scales
幽玄なるレモシィ
2012年 06月 08日 (金) | 編集

Charaxes lemosi

レモシィフタオ Charaxes lemosi


当ブログにて幾度か登場している西アフリカの小さな島国、サントメ-プリンシペ共和国。
そんな離れ小島に固有に生息するフタオチョウも、今回の更新であと1種の紹介を残すのみとなった。
もう何年も紹介しようしようと思っていながら、ちっともやらなかったのには……特に理由はない。
けっして勿体ぶっていた訳でもなく、ことブログになんぞに関しては全てがその時の気分とタイミングなのである。


Charaxes lemosi
Charaxes lemosi
(♂; Fria, Principe I., São Tomé and Principe, Ⅳ. 2007)


ところで虫屋が集まって虫談義をすると、あの虫は上品だとか下品だとかいう話で盛り上がる時がよくある。「あれは凄く綺麗だしかっこいいけど下品だ」とか。結論から先に言ってしまうと、このレモシィは大変上品な蝶であるということをここで断言したい(私の感覚だけど)。

本種レモシィは、主にサントメ島とプリンシペ島の2島からなるこの国の、プリンシペ島の固有種で、キオビフタオ種群lucretius groupの一員。外観的にもっとも近縁と思われるのは、大陸の普通種キオビフタオこと C. lucretius で、一見良く似ているのだが、翅形や、翅表の帯の出方が良く見れば全く異なる。さらに裏の地色はキオビフタオにはない、緑がかった、しっとりとした黄土色で、変哲のない赤茶色であるキオビフタオに比べると、その艶やかさ上品さは比ぶるべくもない。

アフリカのフタオには、フルニエだとか、ノビリスだとか、リディアエだとか、モンティエリィだとかの、誰が見ても珍品美麗で格調高いスーパースターが目立つ。しかし同じく高貴な美種とはいえども、本種はまあ、どう見ても地味。なので、どうしても陰に隠れたマニアックな珍種としての印象が拭えない。正直、私も初めてアフリカのフタオ図鑑でその写真を見た時は、かなり暗い写りだったこともあって、それほど気に留めていなかった。



Charaxes lemosi
Charaxes lemosi
(♀; Fria, Principe I., São Tomé and Principe, Ⅳ. 2007)


とはいえ、綺麗な図版の中にして、そういう写りの悪い写真というのは、往々にして入手困難な珍品である場合が多く、さらにはかなり変わった種であることが大半で、やはり本種もその図鑑の中で何やら怪しいオーラを放ってはいた。けれども「なんか地味だな」というのが最初に抱いた印象だった。
だがしかし、後に紆余曲折の末に実際この手に取ってみたところ……どうであろうか、図鑑では暗いこげ茶と黒っぽい灰色にしか見えなかった翅の裏面は、まさに幽玄ともいえる美しさ。

そして翅を開いてさらに驚いた。この仲間にはオスの前翅が、光を当てて角度を変えて見ると青紫の幻光を発する種がいくつかいるが、本種はキオビフタオよりもその幻光が強く、おまけにオレンジの帯までピンクに輝くのである。
フタオチョウでここまで妖しく美しい幻光を放つ種というのは、せいぜい同じくアフリカのニケテス C. nichetes か、東南アジアのマルス C. mars くらい(どっちも珍しくはない)で、その中でも本種は間違いなく最美であろうかと思う。


Charaxes lemosi


サントメ-プリンシペという所は、こと蝶においては多くの固有のものが高貴かつ異様な雰囲気になるのだが、本種もやはりその例に漏れない、すんばらしい種であると思う。美しいけれども、けっして下品ではないところが素敵である。


随分入手し易くなったのは嬉しい限りですね。







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