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ネコラの顛末 - Discophora simplex
2011年 12月 26日 (月) | 編集

Discophora simplex amethystina

最近、立て続けに人が撮ったマレーシアでの写真にノックアウトされている私です。
ひとつはリンク先の先輩がつい先日ランカウィで撮られたリブナチビキララシジミ Cyaniriodes libna
美麗大珍稀種(表は緑色)ながらもランカウィ島では採れるのですが、まともに探せるのはこの島しかありません。
不思議なことに何故だか島ではこういった珍品が目の前に現れることが多く、以前調査でボルネオのガヤ島に行った時も普通は見られない珍種が結構バサバサ飛んでおりました。

もうひとつは知らない人ですが、なんとダンフォルディ Charaxes durnfordi 。しかも憧れのマレー半島亜種
近年、ほぼ確実に採れる産地が一つ見つかったとは云え、大珍品の座は揺ぎ無い至高のフタオ、いやタテハ。
おそらく本種では初めて公開された生態写真ではないかと思いますが、ダンフォルディの生きたまともな姿なんて初めて見ましたよ。しかもあんまり記録のないタマンネガラで……。
私はこの種 (特にマレー亜種と北ボルネオ亜種、ミャンマー南部亜種) を現地で拝む為に生きているといっても過言ではないのに…、しかも何度か挑戦して、あと少しまで迫るもことごとく敗退しているというのに…、そしてこのブログのアカウント名も本種だというのに…、まったく嫌になりますね。この滾るリビドーを一体どうしろというのか。


Discophora simplex amethystina
Discophora simplex amethystina
(♂; Kg. Nalawan, Sabah, Malaysia, 2. Apr. 2002)

シンプレックスコノハワモン ボルネオ亜種 Discophora simplex amethystina


ところで写真のワモンチョウですが、こいつは手前味噌ながらこれまでの採集人生の中で(よい意味で)最もやらかした種です。
コノハワモン Discophora といえば、よく見かけるソンダイカ D. sondaica は分布も広く、それこそ何処にでもいる最普通種ですが、その種にいちばん近縁とされるシンプレックスは本属中最も稀で、パラワン島と北ボルネオだけに分布します。でもそこまで行けば採れるかというと、そうではなく、特に北ボルネオ亜種のアメジスティーナは東洋区のタテハの中でも10指に入る珍品。おそらく世界的にも存在している標本は数える程ではないかと思われます。
地味ですが。

さてそんなものが何故今、目の前にあるのかという話ですが、このデータラベル当時の私はまだ熱帯2年目の中級採集者(いまだに中級ですが)。上に書いたダンフォルディを狙って採集記録および先輩の振り逃がし記録のある山に毎日通い、トラップを仕掛けてまわる日々でした。
そんなある日の朝のこと。トラップを確認しながら山中を歩き、ダンフォルディの採れる気配がまったく無いことに消沈しつつも一番奥に仕掛けた最後のトラップを覗いたところ、ワモンが入っているではないですか。
このトラップはあんまりワモンの入る環境にはかけていなかったので少し意外に思いましたが、どうせソンダイカだろうと気軽に回収。その後ダンフォルディらしき蝶が谷の反対側を飛んで行ったのを呆然と見送り、「あれは絶対にダンフォルディだった」と呻きながら帰宿。

そしてその晩の標本整理中に、先刻回収したワモンがソンダイカにしては前翅の青い部分が太く帯状に繋がっていることに気付いた訳です(ソンダイカは帯状にはならない)。
とはいえ、まさかシンプレックスなぞ自分に採れると思っていなかったので、まったくその名が頭に浮かぶことはありませんでした。
当然正体はわからず、本種と同じく青い帯のあるネココノハワモン D. necho に似ているなあと思うも、大きさも翅形も変であるし、やはり青い帯のあるジャノメスミナガシ Amnosia decora にも似ていなくもないけれど、そもそもデコラはワモンではないし、と悩んだ末に同行の甲虫屋と共に取り敢えず「ネコでもないしデコラでもないから“ネコラ”だ」という頭の悪い会話を展開してその日は完結。

しかしそうは言っても、やはり変なものを採ると気になるもので、「どうせソンダイカの異常型だろう」と思いつつも同じ時期にボルネオに来られていた年配の採集者の方々とコタキナバルのレストランで夕食をご一緒した折に、冗談で「ネコラを採りました」と三角紙に包んだ標本をテーブルの上に出したところ、先ほどまで談笑していた顔が急に怖く 真面目になり、数瞬押し黙ったあとにこちらを横目で見つつ、押し殺した声で 厳かに「…これはシンプレックスだ」と仰る。もうそこからは事情聴取の始まりですよ。結局、今に至るまでこの場所から追加は得られていませんが。

そういう訳で、何と私はシンプレックスを採集してしまった事が判明したのですが、当時は正直これよりもダンフォルディが採れなかったことが残念でならず、そのような会話をすると「贅沢を言うな」とか「外道にしては大物過ぎる」と罵倒 苦笑され、“外道の管理人”という甚だ不本意な、しかし称賛に満ちた称号を頂戴した次第です。

以上、長文甚だしくも、これが本種に関する阿呆な顛末。
今では良い思い出ですが、やっぱりダンフォルディも採りたかったと思う今日この頃です。

ちなみに、本属 Discophora の英名は“Duffer”で、意味は『馬鹿もの; 無能; ぼけ老人』などですが、これはあんまりですね。




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