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ブータンシボリアゲハ再発見 (Rediscovery of Bhutanitis ludlowi)
2011年 10月 27日 (木) | 編集

ついに日曜の特番に先駆けてNHKにてニュースが放映され、(ほぼ)完全に箝口令が解かれたと思うので、記事にします。ニュースのせいか、今までにないアクセス数になっております。さすが19時の全国放送。


本年8月に、我らが日本蝶類学会とブータン農林省の調査隊、およびNHKの撮影班がブータン政府の特別許可を得て本種の再発見に臨みました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111027/k10013559911000.html

ブータンシボリアゲハがブータン東部奥地の渓谷にて初めて採集されたのは1933年。
本種が続けて採れたのはその翌年だけで、以来、この時採れたロンドンの大英自然史博物館に所蔵される3♂2♀の合計5頭を最後に約80年の間まったく記録が無ありません。そのため世界中の蝶研究者・愛好家から『幻のアゲハチョウ』と呼ばれています。

大珍品のチョウは世に多いですが、大型で人気のあるアゲハチョウ、その中でも“伝説”として語られるのが『オナシカラスアゲハ Papilio elephenor 』 と 『モエルネリマネシアゲハ Chilasa moerneri 』、そしてこの『ブータンシボリアゲハ Bhutanitis ludlowi 』の三大巨頭です。

ソロモン諸島のモエルネリは、2007年頃にニュージーランド人がヘリで直接山中に降下して遂に採集を果たし、インドのオナシカラスは、2009年に現地の研究者によってシッキム南部で生体写真が撮影され、どちらも秘密のベールが剥がされました。最後に残されたブータンシボリは、その異形、そして棲息地の神秘性もあり、アゲハチョウ科最後の、そして最大のロマンとして世界中のチョウ愛好家から『聖杯(Holy Grail)』と称される存在です。

2009年に現地のレンジャーから情報が得られ、世界に先駆けて今回の調査に漕ぎ付けた訳ですが、正直再発見の速報を現地から聞いた時は体が震えました。オナシカラスアゲハ再発見の報を聞いた時も、飲んでるジュースを噴きそうになりましたが、今回のは師匠や先輩が調査隊に参加していたこともあって、さらに格別の感がありましたね。棲息地のトラシャンシ渓谷はブータン東部の奥地で、最寄りの村からさらに長時間歩かなければ辿り着けないそうです。

今回2分ほどの映像でしたが、まだ世界の誰も生きた姿を見たことの無いブータンシボリアゲハが、ブータンの空を飛んでいる映像は圧巻で、感動でした。日曜のNHKスペシャルにて詳しく紹介されると思うので、是非ご覧ください。


ちなみに本種が属するシボリアゲハ属 Bhutanitis (ブータニティス: 本属で最初に記載されたシボリアゲハ B. lidderdalii の最初の標本がブータンで採れたことに因む)は、本種とシボリアゲハ B. lidderdalii, ウンナンシボリアゲハ B. mansfieldi, シナシボリアゲハ B. thaidina の合計4種が知られる小さなグループで、ヒマラヤ山系東側の標高2000m以上に分布します。非常に変わった翅の形から、異形アゲハと呼ばれるアゲハの中でも、テングアゲハ属 Teinopalpus と並んで特に憧れと称賛を戴く高貴なチョウです。なにせ属のコモンネームが“Glory”ですから。

ウンナンシボリもかつては最初の発見以降、世界に2頭しか標本がなく、1981年に日本人によって再発見されるまでは幻のチョウでした。この時の再発見のエピソードは、四川省のミニヤコンカ山で遭難した日本人登山隊の荷物の中から発見されたという壮絶なもので、世界を席巻するニュースになりました。

しかしこの時の標本は、過去に記載されたタイプ標本とは斑紋が異なるため亜種とされ、依然として原名亜種のタイプ産地は不明なままでした。その後1989年、偉大なる日本人採集家、北脇和光が雲南省西部にある土菅村にて遂に産地を再発見し、やはり世界中から称賛を浴びました。北脇和光氏は戦後外国人の入域が困難な中国の広西自治区や四川、雲南、東チベットなどの奥地に、時に中国人のふりをして果敢に挑戦し、多大なる成果を残した偉人であり、現代のリーチLeechやオーベルチュールOberthurと言っても過言ではないでしょう。しかし彼は後にチベットで食した羊の脳味噌が原因で劇症肝炎に罹り、若くして帰らぬ人となりました。

またシボリアゲハも今でこそ世界中に標本がありますが、20世紀初頭くらいまでは大珍品でした。当時、裕福なコレクターの依頼を受けた偉大な採集家であるドハーティDohertyが、本種を採集するべく東北インドの奥地ナガヒル(Naga Hills)まで分け入ったものの何ヶ月も滞在しても姿は現れず、半年以上してようやく網に納めることに成功。しかし安堵したその瞬間、竹槍が何本も仕掛けてある虎用の落とし穴に落下して重症を負い、この傷がもとで後にアフリカの大地に斃れた。という逸話もあります。

何かと強烈なエピソードの多い本属ですが、その分、特別な憧れと神秘性があり、今回の再発見も世界中から称賛を以て迎えられることと思います。




残された再発見のロマンは、もうポンテンモンキチョウくらいしか無いだろうなぁ…







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