Lepido and Scales
Tawi-Tawi ②
2014年 12月 30日 (火) | 編集

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(♂, Bongao Peak, Bongao Is., Tawi-Tawi, Philippines)

アミクスフタオ Sulu諸島亜種 Charaxes amycus sangana

先日、10余年越しの怨念が成就した。スールー諸島はタウィタウィのアミクスフタオssp. sangana ♂。
フィリピン全域に分布する本種の中において最も異様かつ特異な亜種。タウィタウィという場所とこれに関しては以前少し触れたことがあるので、詳しくはそちらも併せて読んでいただければ幸いであるが(Tawi-Tawi)、改めて簡単に解説すると、とにかく黒いのである。

本種アミクスフタオはパラワン島を除くフィリピン国土全域に分布している。幾つかの島毎に多くの亜種が知られており、これらは(見慣れると)一見して区別できる。とはいえ並べてみると、北のバブヤン諸島から南のミンダナオ島まで、翅の斑紋は基本的にオレンジと黒である。ミンダナオ近辺では特に黒色部が減退し、色調も明るく、メスでは白帯が出ない。
ところがミンダナオから更に飛び離れた遥か南、むしろ距離的にはボルネオに近い位置に分布する本亜種は、オスの黒色部が極大に発達し、地色も褐色に近い。ミンダナオまでを俯瞰すると、変異はあるとはいえ纏まっているのに対して、これだけ突然心臓に悪い斑紋をしている。

下の北から南へと並べた箱の写真を見て頂ければ、その異様さが理解できるだろうか。

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メスは以前に入手していたが、やはりこの亜種はオスがあってこそ。そういう訳で、今年入手したフタオの中の最後のひと品にして、最大に嬉しかったものがこの個体である。大体モノが揃ってくると、こういうどうしようもないものが残り、それが時間と共に憧れから怨念へと転じてゆくのだが、これで一つの呪いが解放されたことになる。

1995年と少し古く、状態も決して良いとは言えない標本ではあるが、これぞまさに比国におけるタテハの帝王である。しかも日本人の採集品というのが凄い。

近年、タウィタウィの中でも、この標本が採集されたBongao島は治安が良くなってきたようで、以前のように装甲車に護衛されて採集したというような話(約20年前)とは状況が変わってきているようだ。とはいえ、僻地ではあるのでこれからも採集に訪れるような者はまだまだ少ないのではないだろうか。

さて2014年も最後の更新ですが、数えてみたら今年はこれを含めて16回しか更新しておりませんね。
更新というよりは、もはや生存報告のレベルですが、ご訪問いただきました皆さま、本年もお世話になりました。来年もこんなペースで、思い出したように何となく更新されていくと思いますが、引き続き宜しくお願い致します。

あ、ヘビもまだちゃんとおりますよ。




丸Max
2014年 07月 31日 (木) | 編集

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(Khasi Hills, Assam, India)

マルマックスフタオ Charaxes marmax marmax

アッサムのマルマックスフタオ。タイプロカリティの標本です。
インドシナのCharaxesはベルナルダス以外、マルマックスもカールバもアリストギトンもメスが巨大で大迫力。このオスは、ちょっと裏のコントラストが強めの個体ですが、皆さまの典型的な脳内マルマックスだと思います。翅形には多少個体変異があって、もう少し丸みを帯びる個体もいます。

インドシナの茶色いフタオは、場所にもよりますが、採れる内の80%はつまんないベルナルダスで、次の10%がマルマックス。さらに残りの5%をカールバとアリストギトンが分けている感じでしょうか。まあ、ベルナルダスは実は深く見出すと面白いのですが、それはそれとして、このマルマックスはオスならそこそこ見掛ける機会はあります。現地に行って採れる気は全くしませんが。かく言う私もタイとかラオスとかベトナムとか海南とか行きましたが、ベルナルダス以外見たことも無いです。

そもそも標本商で売ってる蝶で、1000円より高い蝶なんて自分ではそうそう採れないのです。1000円ですよ、せんえん。これは現地の採り子が毎日毎日頑張ってるからそうなのであって、日本人がちょちょいと行って、そうそう採れるもんではないのです。私が遥かメンタワイで運良くネルソニィルリモンジャノメ採って喜んで帰ってきたら、東京の即売会で1500円で売ってるの見た時は目が虚空を泳ぎましたね。まあ採り子からの買い標本と、自己採集ではラベルの信頼度が全く異なりますけどね。
そういう訳で、珍品は1000円以上から。



そんなに似てない
2014年 06月 01日 (日) | 編集


(Lombok Is., Indonesia)

エルウェスフタオ Charaxes elwesi detanii

小スンダ列島の固有種。翅形は著しい縦長で、bernardus 種群(所謂チャイロフタオ)としては変わった形をしている。大きな島ごとに斑紋が異なり、それぞれ亜種とされている。このロンボク島の亜種は雄が最も黒くなり、雌はいちばん白くなる。
最初にエルウェシィがスンバワ島から記載された当時は1雌しか知られておらず、斑紋パターンが微妙に似ているスラウェシのニテビスフタオ(C. nitebis )の亜種とされたのが面白い。





Tawi-Tawi
2014年 02月 26日 (水) | 編集


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(♀, Bongao Peak, Bongao Is., Tawi-Tawi, Philippines)

ソロンフタオ Sulu諸島亜種 Charaxes solon tindongani


フィリピンのスールー諸島もしくはタウィタウィと言えば、同国南部のミンダナオ島とマレーシアの北ボルネオの間にあるスールー海の南端に位置する限りなくボルネオ島の近くに浮かぶ島々であり、一番南のSibutu島に至ってはボルネオから普通に見えるという。
これだけボルネオの近くにありながら蝶相はフィリピン系で、幾つかの種はここだけに特化した斑紋をもつ固有の亜種となっている。最も有名なのはエベリナイナズマDophla evelina の亜種albusequus で顕著に白化する。誰が見てもぶっ飛ぶほどの凄い亜種であり、タテハコレクター垂涎の的である。6,7年くらい前に少数出回ったのが最後でその後がないが、あの時無理してでも買っておけばよかった。

ここに出したソロンの亜種は残念ながら他の亜種とは大した違いはないのだが、同諸島にいるアミクスフタオCharaxes amycus の亜種sangana は上のエベリナ同様に著しく変わっており、エベリナが白化するのに対して、ここのアミクスは激しく黒化する。上述のエベリナが出回った最後の便でもこれは来なかった。

このように非常に面白い地域なのだが、どうもここには某一神教原理主義者の活動家達がアジア最大級の訓練基地を構えているらしく、非常に危険で滅多なことでは標本が入荷しない。お陰で標本の価値は高いままだが、入手できないのはいただけない。困ったものである。





ラトナの変異
2014年 01月 23日 (木) | 編集


(♂, Timika, West Papua, Indonesia)

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(♂, Epomani, Central Papua, Indonesia)

ラトナフタオ (ニューギニア島西部亜種) Charaxes latona papuensis

ニューギニア島のインドネシア側にいるラトナフタオの斑紋は上段の写真の様な個体で大体安定していますが、二段目の個体の様なのも出ます。これが単なる個体差なのか、この場所の斑紋なのかは、いまのところ手元に標本がこれしかないので分かりませんが、ラトナの雄としてはパプアニューギニアのBulolo~Wauの辺りで採れるものを除いて、この様な斑紋を持つものは見たことがありません。

この様な黒い帯がそれぞれの要素に分解されて複雑になるパターンはフタオにおいては案外見られるもので、東洋区の普通種たるベルナルダスC. bernardus にも地域によっては(特にインドシナ半島)頻繁に見られます。

鱗翅目において、一般的に斑紋というのは複雑→単純という方向で変化していくとされており、さらには雌雄異型の種では雌の方が複雑、つまりはより原始的な斑紋をしていることが殆どです。

Fak Fak-
(♀, Fak Fak, West Papua, Indonesia)

今回のオスの変異は雌型と言える程のものではないですが、より祖先的な形質状態が現れた変異であることは間違いないでしょう。





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